足のしびれ
血行不良
・血行不良
足のしびれの原因として、足の血流が悪くなる血行不良があります。正座を長い時間したあとなどに足がしびれる事は経験された方が多いと思います。このように、よくない姿勢を続けると血流が悪くなりますが、運動不足や筋力の低下などから血流が低下することも、慢性疾患などの内科的な病気が影響する場合もあります。
・神経圧迫によるもの
身体の神経が圧迫され、異常が起きることで発生するしびれの場合があります。神経には大きく分けて2種類あり、足にしびれを生じるものとしては、脊髄などの中枢神経に異常が起きている場合と、神経根や足にある末梢神経に異常が起きている場合の2つの原因がかんがえられます。骨の変形などにより神経を圧迫する場合も多く症状になります。
神経圧迫によるしびれは、発症している部位とその症状、発症する状況や頻度などから診察します。特に高齢の方は、年齢を重ねるにつれて骨格が変化するため、神経障害が起こる可能性が高まります。骨の変形は姿勢の変化(筋力低下や関節可動域の低下)などからおこります。
・ビタミンB群の欠乏によるもの
ビタミンB群の欠乏によって末梢神経に障害が起き、しびれが出ることがあります。
1. ビタミンB1(チアミン)
ビタミンB1は、神経細胞がエネルギーを生成するために不可欠です。不足すると、脚気やウェルニッケ脳症などの神経障害が発生する可能性があります。これらの状態は、特にアルコール依存症の人々に多く見られます。
2. ビタミンB6(ピリドキシン)
ビタミンB6は、神経伝達物質(セロトニン、ドーパミン、GABAなど)の生成に関与しており、神経系の調整に重要です。不足すると、うつ症状や末梢神経障害(しびれや痛みなど)が引き起こされることがあります。
3. ビタミンB12(コバラミン)
ビタミンB12は、神経細胞の保護を行うミエリン鞘の維持に関わり、不足すると神経障害(しびれ、感覚の鈍化、バランスの障害など)を引き起こします。ビタミンB12欠乏症は、特に菜食主義者や高齢者に多く見られ、深刻な場合には認知機能の低下や歩行困難を伴うこともあります。
4. 葉酸(ビタミンB9)
葉酸は、ビタミンB12とともに働いて、神経細胞のDNA合成や修復に重要な役割を果たします。不足すると、胎児の神経管欠損症(脳や脊髄の発達異常)や、成人では末梢神経障害などが引き起こされることがあります。
・骨や関節の怪我・糖尿病や脳卒中などの疾患によるもの
神経や栄養状態に異常がなくても、怪我などで骨や関節に不具合が起こり、しびれが出ることがあります。また、リウマチや痛風など、関節に障害が起こりやすい病気も、足のしびれの一因になります。
その他、糖尿病や脳卒中といった重大な疾患が潜んでいる場合もあります。
糖尿病を治療せずに放置した場合は、末梢神経に障害が起きて、しびれや痛みが発生します。また、脳梗塞をはじめとする脳卒中でも、代表的な症状として、しびれや痛みが挙げられます。脳卒中は急速に症状が進むだけでなく、後遺症のリスクもあるため、治療の緊急性が高い病気です。半身性の麻痺などをともなう場合はすぐに救急車を呼んでください。
足の痺れが起こす疾患とその症状
足のしびれをともなう疾患は数多くあります。神経を圧迫するだけで痺れの原因となりますので、痺れはすぐに受診されることをすすめます。足のしびれを引き起こす疾患に多いのは次の病気です。
これらの、疑われる症状があっても自己判断はせず、医療機関に受診されることをお勧めしています。
1. 末梢神経障害(ニューロパチー)
末梢神経が損傷したり、機能不全に陥る状態です。糖尿病性ニューロパチーが最も一般的で、糖尿病患者に多く見られます。
症状: 足のしびれや痛み、チクチクする感覚、麻痺などが起こります。
2足根管(そっこんかん)症候群
アキレス腱付近から足の裏へとつながっている神経に障害が起き、かかと以外の足裏や足首、足の指に痛みが出ている状態を足根管症候群といいます。この神経は、内くるぶし内部の狭い空間を血管や腱とともに走っているため、血管や腱によって圧迫されやすい部位です。
症状:足の甲やふくらはぎには症状はなく、足裏や、足首、足の指に痺れや痛みが起こります。
3. 坐骨神経痛
坐骨神経が圧迫されることにより、下半身に痛みやしびれが生じます。椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症が原因となることが多いです。
症状: 腰から足にかけての鋭い痛みやしびれ、場合によっては足の動きが制限されることがあります。
4 椎間板ヘルニア
椎間板が損傷し、中身が突出して神経を圧迫する状態です。これにより、神経が障害を受けると足のしびれが生じます。
症状: 腰痛と共に、片側の足にしびれや筋力低下を感じることが多いです。
5. 脊柱管狭窄症
脊柱管が狭くなり、脊髄や神経根が圧迫される状態です。加齢や骨の変形が主な原因です。
症状: 長時間歩行すると足のしびれや痛みが増し、休むと軽減するのが特徴です。
6. ビタミンB12欠乏症
ビタミンB12の不足により、末梢神経に障害が生じ、しびれや感覚の鈍化が起こります。菜食主義者や高齢者、吸収不良を起こしやすい人に多く見られます。
症状: 足のしびれ、麻痺、バランス感覚の低下が見られます。
7. 動脈硬化などによる間欠性跛行
間欠性跛行(かんけつせいはこう)は、主に動脈硬化が原因で発生する歩行障害の一種で、歩行中に足やふくらはぎに痛みやしびれが生じ、休むと症状が改善するという特徴があります。この症状は、主に末梢動脈疾患(PAD: Peripheral Artery Disease)と関連しており、動脈の狭窄や閉塞により、足や脚に十分な血流が供給されなくなることで発生します。
症状: 長時間歩行すると足のしびれや痛みが増し、休むと軽減するのが特徴です。
8モートン病(Morton's neuroma)は、足の中で神経が圧迫されて炎症を起こすことで、足の痛みやしびれを引き起こす病気です。特に、足の指の間に位置する神経(主に第3趾と第4趾の間の神経)が影響を受けることが多い病気です。
症状:足裏のしびれや痛みが主な症状として現れます。
足の痺れを治すには?自分でできる対処法
足のしびれを和らげたいときに効果的な対処法を紹介します。根本から治療するためには医師の診察が必要ですが、自分でケアすることで症状が緩和される場合もありますが、これらは治療ではなく症状緩和にすぎないので注意してください。(治療されることはありません)
安静にする
足のしびれや痛みが急激に現れた場合、まずは安静にして体を休めてください。しびれが強いときに無理をしてしまうと、症状が悪化する可能性もあります。ただし、長期間横になったままだと筋力の低下などを招くこともあるので、安静にしても症状が緩和しない場合には受診するようにしてください。
前かがみの姿勢をとる
腰部脊柱管狭窄症がしびれの原因の場合、前かがみの姿勢をとるとしびれが和らぐことがあります。立ちっぱなしになるとしびれや痛みが出る場合は、肘をつく、5〜10cmほどの足台に片足を乗せるなどすると、腰のそりが和らぎます。
同様に、歩いているときは、杖をついたり、手押し車を押したりして前かがみになると、長く歩くことができますが、この姿勢を維持することは別の痛みにつながるため注意が必要です。
できるだけ早い段階で姿勢改善治療を行い、適切な姿勢であるける筋力と可動域の改善で受診されることを推奨します。
温める
対象の部位を温めると血流が改善することで、症状が和らぐ可能性があります。
カイロなどで患部を温める場合、糖尿病や神経障害などの影響で神経に麻痺がある場合は、低温やけどに気づけないこともありますので注意してください。
ツボを押す
ツボを押すと、血流が増えまた筋肉の緊張がほぐれることで、症状が緩和する場合があります。膝裏外側にある腓骨神経内の血流を改善することで、しびれが和らぐことも。しびれがある箇所が、脛から足先(足の前側)の場合は「足三里(あしさんり)」というツボ
ふくらはぎから足首(足の後ろ側)の場合は「陽陵泉(ようりょうせん)」というツボがあります。
足三里の位置と効果
位置: 足三里は、膝の下約4横指(指4本分)の距離にあり、脛骨の外側に位置します。
効果: 東洋医学では、足三里は「気」と「血」を巡らせ、疲労回復や脚の不調に作用するとされています。また、胃腸の調子を整えるツボとしても知られています。
陽陵泉の位置と効果
位置: 陽陵泉は、膝の外側、腓骨(ひこつ)の頭の下に位置しています。膝の外側の少し下を触ると、くぼみを感じる部分があり、そこが陽陵泉の位置です。
効果: 陽陵泉は、東洋医学では「筋の要穴」とされ、筋肉や筋膜の緊張を和らげる働きがあります。また、気血の巡りを改善し、関節の動きを滑らかにするとも言われています。
バランスの取れた食事を取る
しびれを予防するためにはビタミンB群が重要になります。食生活の偏りによってビタミンB1・B6・B12などビタミンB群の不足が続くと、しびれや力の入りにくさにつながり、ビタミンEは末梢の血液循環に関わりますので痺れの遠因になる場合もあります。
ビタミンの不足は医療機関で検査を行う事ができますが、日頃から一部の栄養素に偏らず、バランスの取れた食事を取ることが重要です。
神経の働きや血液循環に関与するビタミンが配合された市販薬を活用するのも一つの方法になります。足のしびれの一因にはビタミンの不足が考えられ、食事からビタミンを十分に摂ることが難しい場合には、市販薬を活用するのも一つの手です。
糖質を代謝してエネルギーを作るビタミンB1は、神経や心臓が正常に働くために必要不可欠な栄養素です。また、ビタミンB12は傷んだ末梢神経の修復に関与しており、ビタミンEは抗酸化作用により細胞の損傷を防ぐ効果や血液循環にも関与しています。そのため、こうしたビタミンを含む市販の内服薬を活用することで、末梢神経の障害を抑え、足のしびれを緩和することができます。薬局・ドラッグストアの薬剤師などに相談し、自分にあった市販薬を見つけることができます
当院でできる治療
まずは保険診療を受診ください。
・姿勢矯正による神経圧迫の改善
部位によって矯正する方法や筋肉、骨格はことなりますが、例えば、足底装具を用いて足の姿勢を矯正することで、神経圧迫を解決することができます。また、リハビリテーション(ポダリハ)や関節可動域の改善により、特定の筋肉の問題を解決することで神経圧迫を改善することができます。症状にあわせて、姿勢評価、歩容解析、ROM検査(関節可動域の検査)を組み合わせて圧迫する神経を特定して治療を行います。
・手術による神経圧迫の改善
骨の変形による圧迫が強い場合、手術による問題となる変形の矯正を行うことができます。
また、モートン病の場合は日帰り手術によって神経種を取り除くことで治療が可能です。
・血流改善治療(Art Assit + 臍帯由来セクレトーム治療)
投薬による動脈硬化の治療を行うとともに、リハビリテーションまたは、リハビリ機器(ArtAssit 動脈ポンプによる治療)による末梢毛細血管の再生治療を行っています。またこれらの血管新生を促進するために臍帯由来セクレトーム療法を併用することができます。
・採血検査によるビタミンや栄養状況の検査とビタミン注射
栄養状態が悪いことで痺れを起こす場合があります。当院では内科専門医・糖尿病専門医による内科外来も設置されています。採血検査から、ビタミンB群の状態を検査するとともに慢性疾患の有無、リウマチなどの有無など内科的な治療のスクリーニングと投薬を行います。
また、ビタミン注射による治療も行う事ができます。